• 生産年齢人口の減少に伴い、これから大幅な人手不足問題が想定され、一部では顕在化し始めています。信用調査会社によると、従業員の離職、採用難、人件費高騰などを原因とする、いわゆる人手不足倒産は、本年上半期に全国で約百八十件発生、過去最多を大幅に上回るペースで推移しています。人手不足の問題は、一過性のものではありません。
    スライドを御覧いただきたいと思いますが、労働市場調査などを専門に行う民間会社の推計では、府の労働供給は二〇三〇年に五・九%、二〇四〇年に一〇・三%不足するとし、長期的な人手不足の継続が予測されています。全国的に二〇四〇年には約一千百万人の労働供給不足が発生するとされます。これ重要なことは、将来、急に人手が不足するような状況が起こるんではなくて、だんだんと、スライドにも書いてあるんですけども、ワニの口が開くように、年々年々需給の逼迫が拡大していくということです。また、この人手不足というのは全国一律ではなく、経済成長の度合いによって労働需要というのが増していくという性質がありますので、副首都を目指す大阪にとってこれから避けられない課題だというふうに私は捉えています。
    そうしたことから、先般、我が会派でも人手不足問題に係る戦略的な取組について知事に提言したところです。府内企業がビジネスを維持、さらに成長していくためには、人口減少の将来を見据え、府内企業の人材確保について戦略的な支援が重要と考えますが、商工労働部長の所見と取組をお伺いします。
  • 〇人手不足が喫緊かつ長期的な課題となる中、府内企業がビジネスの維持、成長を図るためには、働きたい人材を掘り起こし、大阪の成長に資する人材を呼び込み、府内企業につなげるとともに、府内企業による働きやすい職場づくりや省力化への取組をサポートするなど、労働施策と商工施策の両面からのアプローチが必要と考えています。

    〇人手不足の解消に向けては、潜在的に働きたい人材の掘り起こしも重要であると考えておりまして、今年度より、時間や場所等に制約のある求職者が柔軟に働ける職場環境の整備を後押しするため、人材確保を図る府内企業向けに専門家によるコンサルティングを実施し、業務の見直しや仕分を促進するところであります。

    〇あわせて、働きたい人材に対して、企業が求める技術や資格の取得のほか、求職者だけでなく、在職者向けにも専門アドバイザーによるリスキリングのサポートなどを行い、働く上で必要な知識、技能の習得を支援しております。

    〇さらに、中小企業による人材確保は、採用に向けた支援だけではなく、人材の育成や定着、省力化を図る設備投資などの取組に対するサポートも必要であります。このため、大阪産業局に中小企業向けの人材確保に係る相談窓口を設置し、専門家による助言や協力機関の紹介など、幅広いサポートをワンストップで提供しているところであります。

    〇引き続き、企業と人材双方へきめ細かな支援を行うことにより、府内企業が人材を確保し、自社の成長、ひいては大阪経済の持続可能な発展につなげてまいります。
  • さきの民間調査では、職種別の労働需給シミュレーションを行っており、特に生活維持サービスを担う職種で著しい労働供給不足が生じるとしています。
    例えば、スライドを御覧ください。
    輸送・運搬の職種では、全国で二〇三〇年までに三十七・九万人、二〇四〇年には九十九・八万人の不足、建設分野では二〇三〇年に二十二・三万人、二〇四〇年に六十五・七万人の不足が推定されているところです。こうしたことが現実となると、荷物が配送できない、遅配する地域や、道路などインフラをメンテナンスできない地域が生まれてくる可能性が高いとしています。
    よって、人手不足が特に懸念される職種や業界に対しては、個別の支援が必要だと思います。さきの二つの業界は、府民の生活インフラそのものですが、働き手にとっては厳しい職場環境のイメージもあり、募集しても人材がなかなか集まらない状況とも聞くところです。人手不足が特に深刻な業界に対し、魅力発信、生産性向上、定着支援等が重要と考えますが、府としてどのような取組を行っていくのか、商工労働部長にお伺いします。
  • 〇運輸や建設などの業界については、府内の業界団体などで構成する大阪人材確保推進会議において、業界のイメージアップや労働環境の改善に向けた取組を後押ししているところです。また、特に中小企業においては、多重下請構造の問題等により価格転嫁が難しく、賃上げにつながりにくいため、人手不足が深刻化している要因の一つとなっております。

    〇このため、府では、下請かけこみ寺による相談や価格転嫁、取引適正化の講習会等を開催し、中小企業の賃上げ等に向けた環境整備や、労働環境の改善等による人材の定着を支援するとともに、業界の魅力を伝えるセミナーや職場体験等の実施に加え、DXによる業務効率化を支援しております。

    〇さらに、今年度は緊急対策として、運輸・建設関連業界の府内企業による人手不足解消の取組に対して補助金を上乗せするなど、二〇二四年問題を踏まえ重点的な支援を行っているところです。

    〇今後も、業界団体と連携して、マッチング機会の提供や業界の魅力発信に取り組んでいくとともに、個々の企業の人材確保に向けた取組を労働施策、商工施策の両面からアプローチし、支援してまいります。
  • 折しも、運転手不足などによりバス会社が撤退した南河内地域では、万博終了後に大阪メトロと連携し、万博会場を走らせた自動運転バスにより、大阪府として自動運転の実証実験を行うとの報道がありました。やはり、IT活用やDX化の取組が欠かせませんが、業界によっては人による業務やサービスにこだわり、後ろ向きな企業も多いと聞きます。DXなど生産性向上の事例を広く発信するなど、革新的な取組で人不足に対応していく、そんな機運の醸成にも努めていただきたいと思います。
    ほかにも多様な働き方の推進による労働供給の掘り起こし、就業者の定着管理、また省力化、省人化などを含む自動化など、あらゆる方法により、この状況を乗り切っていかなければなりません。今後、労働力の供給が制限されていく人手不足社会の課題は避けられません。一日でも早く対策を行うことが、また一日、人手不足の状況を遅らせることにつながります。裏を返せば、一日遅れれば、供給制約の危機が一日早まるということでもあります。府としても危機感を持っていただき、取り組んでいただきたいと思います。
    この夏、比叡山延暦寺に先輩や仲間たちと行ってきました。「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」、それぞれが自らの持ち場で光となって周りを照らしていく、そういった人材こそが国宝であるとのことでした。自らの力を生かし切ることで、社会が、国が明るくなっていくというもので、人は宝、これは現代にも通じる教えだと思います。人口が減少していく中にあって、それぞれが得意なことを生かせる、一人一人が輝く大大阪を目指していっていただくよう、要望しておきます。
    最後に一つ、人手不足の状況とかけまして、王手飛車取りの一手と解きます。その心は、どちらも待ったなしの状況であります。ちょうどお時間となりました。これで、私の一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。